筐体/板金部品を設計する際、どの板厚を選択しますか?
過去の図面に習うのも良いですが、根拠を明らかにして板厚を選択するのも良いですよね😊。
ここでは、鋼鈑製の筐体や機器取付パネルを例に板厚選定のヒントを紹介します。
「規格」からみた板厚選定
●設計される製品規格から板厚を選定してください。
例として分電盤、制御盤の規格から板厚を選定してみます。
正面の面積(㎡) | 鋼鈑の呼び厚さ(mm) |
0.1以下 | 1.0 (0.8) |
0.1を超え0.2以下 | 1.2 (1.0) |
0.2を超える | 1.6 (1.2) |
1-1 JIS C 8480 キャビネット形分電盤
筐体に用いる鋼鈑の板厚は、表1の規定値以上と
しています。
折曲げ、リブで補強したもの、ステンレス鋼を
用いた場合は括弧内の値を用いてもよい。
0.1㎡は約30cm角、0.2㎡は約45cm角です。
1-2 JSIA 113 キャビネット形動力制御盤
(日本配電制御システム工業)
筐体は板厚1.6mm以上の鋼鈑、扉は厚さ1.2mm以上の鋼鈑とします。
取付ける枠は、板厚1.6mm以上の軽量形鋼、又は3mm以上の形鋼とします。
「機器を固定するねじ径」よりみた板厚選定
●機器を固定するねじ径より板厚を選定してください。
ねじ径 | ねじ ピッチ (mm) | 必要板厚 2山分 (mm) | 必要板厚 3山分 (mm) | 必要板厚 (mm) |
M3 | 0.5 | 1.0 | 1.5 | 1.2 以上 |
M4 | 0.7 | 1.4 | 2.1 | 1.6 以上 |
M5 | 0.8 | 1.6 | 2.4 | 2.3 以上 |
M6 | 1.0 | 2.0 | 3.0 | 2.3 以上 |
2-1 機器を取付けるパネルの板厚
機器のねじ径より板厚を設定します。
ねじを2山掛ける及び3山掛けるとすると
必要板厚は表2以上の値となります。
動かない機器は2山以上、
電磁接触器など動く機器は3山以上
ねじが掛かるように板厚を選定します。
2-2 バーリング加工による ねじ山確保
板厚が薄い場合、バーリング加工してねじの掛りを確保します。
表3にバーリング高さ表します。
かしめナットを使用する手段もあります。
ねじ径 | t1.0 | t1.2 | t1.6 | t2.0 |
M3 | 1.7 | 2.0 | – | – |
M4 | 2.0 | 2.2 | 2.6 | – |
M5 | 2.3 | 2.5 | 3.0 | 3.5 |
剛性からみた板厚選定
●筐体や機器取付けパネルの剛性から板厚を選定してください。
表4に板厚と剛性の関係を表します。
3-1 板厚による剛性が変わります。
「曲がり難さ」は断面2次モーメントIに表されます。
I=bh3/12 b:幅、h:厚さ
⇒板の剛性(断面2次モーメント)は、厚さの3乗に比例します。
板厚をワンランク厚くすると剛性は2~3倍となる。
逆に ワンランク薄くすると剛性は 半分程度 となる。
板厚 mm | t3 | 0.53と比較 | 0.83と比較 | 1.03と比較 | 1.23と比較 | 1.63と比較 | 2.33と比較 | 3.23と比較 |
0.5 | 0.125 | 1.0 | 0.2 | 0.1 | 0.1 | – | – | – |
0.8 | 0.512 | 4.1 | 1.0 | 0.5 | 0.3 | 0.1 | – | – |
1.0 | 1 | 8.0 | 2.0 | 1.0 | 0.6 | 0.2 | 0.1 | – |
1.2 | 1.728 | 13.8 | 3.4 | 1.7 | 1.0 | 0.4 | 0.1 | 0.1 |
1.6 | 4.096 | 32.8 | 8.0 | 4.1 | 2.4 | 1.0 | 0.3 | 0.1 |
2.3 | 12.167 | 97.6 | 23.8 | 12.2 | 7.0 | 3.0 | 1.0 | 0.4 |
3.2 | 32.768 | 262.1 | 64.0 | 32.8 | 19.0 | 8.0 | 2.7 | 1.0 |
3-2 パネルが大きいとたわむので、曲げや固定点を増やして剛性を高めてください。
パネルの周囲を曲げたり、固定点の間隔を短くするとパネルの剛性が高くなります。
剛性を高め材料を薄くすると、軽量化とともにコストダウンが期待できます。
まとめ
●板厚は設計する製品規格に従ってください。
参考までに筐体の板厚は、大きさによって
500mm角以下のものは t1.2
500mm角を超えるものはt1.6
縦1600mmを超えるものはt2.3(経験則) だとよいです。
●機器を取付けるパネルの板厚は、ねじ山のかかりを考慮してください。
M3,M4の取付ねじは t1.6
M5,M6の取付ねじは t2.3
及びバーリング を使用してねじ山を確保してください。
●ドアやパネルの板厚は、たわみを考慮して薄板を使用して剛性を高めるとよいです。
参考資料
JIS C 8480 キャビネット形分電盤
JSIA 113 キャビネット形動力制御盤
ミスミ バーリングパンチカタログ
最後まで見ていただき ありがとうございました。