配電盤類にプラスチック材料を使用する場合、製品毎に難燃性が決められています。
製品規格に設定された難燃性から材料の選定を行います。
難燃性の認証基準として、米国の UL94規格が最も一般的です。
UL規格に合格したプラスチック材料は、承認済材料として広く一般に公表されイエローカードと
呼ばれる認定カードが発行されます。
樹脂材料メーカーの物性表に UL94の認定結果が掲載されます。
材料の難燃性は、その物性表を見て確認できます。
難燃性に関する配電盤類の規定、ＵＬ規格の難燃性を説明します。
難燃性に関する規定
電気製品の火災事故防止のため、難燃性を有するプラスチックの使用を求めています。
難燃性はおおよそ、UL94 V2（自己消化性）以上の性能を求めています。
開発する製品の要求性能を確認してください。
UL94概要
●UL94の設定
部品の難燃性を測定するために、部品毎に試験を実施するのは手間がかかり面倒な作業です。
また、難燃性は材料の物性に大きく依存することより
「ある水準の難燃性を認定された材料で作られた部品は、所定の難燃性を持つ」と
UL94は判断し、試験片条件や試験方法を規定して材料の認証基準を設定しました。
●試験方法の種類
試験方法は、大きく3種類あります。
1. 水平燃焼試験 ＨＢ 燃え広がる速さを確認する
2. 垂直燃焼試験 Ｖ 火が消えるまでの時間を確認する
3. 高い難燃性試験 ５Ｖ 大型製品の燃焼性を確認する
試験方法と難燃性度合い
燃焼し難い ← ５ＶＡ ＞ ５ＶＢ ＞ Ｖ０ ＞ Ｖ１ ＞ Ｖ２ ＞ ＨＢ → 燃焼し易い
●ＵＬ認定と製品肉厚
ＵＬ認定は製品の最小肉厚を規定しています。※燃焼性は厚さにより変化します。
規定以下の厚さでは規定の燃焼性を確保できません。
ＵＬ認定より薄い肉厚の場合、別のプラスチックの認定グレードを使用します。
例）Ｑ：1.6㎜でＵＬ認定されているグレードを 1.0㎜の肉厚製品に使用できるか？
Ａ：認定範囲を逸脱する。認定品として扱われない。
●ＵＬ認定を証明する方法
ＵＬ認定を証明する書類には２種類の証明書形式があります。
材料メーカーから取り寄せます。
① イエローカード形式
② レター形式
ＨＢ試験（遅燃性）
短冊状の試験片を水平にして燃焼させ、その燃焼速度で合否判定します。
試験片の厚みに応じ、40㎜／分と 75㎜／分の2種類の基準があります。
●試験方法（水平燃焼試験）
試料を水平にし片端を固定し、その端にガスバーナーの炎を 30秒間接炎させる。
炎を離した後に試料が燃焼を続けたなら、その燃焼速度を測定する。
●判定方法
1）厚さが 3.0～13.0㎜ の試料は、75㎜の間隔で燃焼速度が毎分 40㎜ を超えない。
2）厚さが 3.0㎜ 以下の試料は、75㎜の間隔で燃焼速度が毎分 75㎜ を超えない。
3）炎が試料の端から 100㎜ の点に達する前に燃焼が止まる 。
Ｖ試験（自己消化性）
Ｖ－０、Ｖ－１、Ｖ－２ ともに試験方法は共通です。
５本の試験片を用いて判定します。
●試験方法（50W垂直）
垂直に保持した短冊状の試験片下端に 10秒間バーナー炎を接炎させる。
その後バーナー炎を試験片から離す。
炎が消えれば直ちにバーナー炎を更に 10秒間あてたのちバーナー炎を離す。
●判定方法
V－０、V－１、V－２の判定は、1回目と2回目の接炎終了後の有炎燃焼持続時間、
2回目の接炎終了後の有炎燃焼持続時間及び無炎燃焼持続時間の合計、
5本の試験片の有炎燃焼時間の合計、並びに燃焼滴下物（ドリップ）の有無で判定します。
５Ｖ試験
５ＶＡと５ＶＢは、Ｖ試験のバーナー炎より10倍大きい燃焼エネルギーのバーナー炎を使用して
判定する最高部類の燃焼性クラスです。
５ＶＡと５ＶＢの試験方法は同じで、短冊状試験片試験と板状試験片試験の両方で判定します。
短冊状試験片試験による判定は、Ｖ試験と同じです。
板状試験片試験は、５ＶＡ：開口なきこと、５ＶＢ：開口があっても良いと判定します。
電気機器で５Ｖを要求される用途は、大型の装置や据え付け装置があります。
基本は５ＶＡが要求され、５ＶＢは用途（事務機器、情報処理装置など）を限定されます。
●試験方法
短冊試験片を垂直に保持し、試料の下端に 5秒間ガスバーナーの125㎜炎を接炎させる。
その後に 5秒間離す。この操作を 5回繰り返す。
平板試験片を水平に保持し、試料の下面中央 に 5秒間ガスバーナーの炎を接炎させる。
その後に 5秒間離す操作を 5回繰り返す。
●判定方法
５ＶＡ
1.最後の接炎の後、60秒以上燃焼を続ける試料がない
2.試料の下方に置かれた脱脂棉を発火させる燃焼する粒子を落下させる試料がない
3.試料に穴が開かない
５ＶＢ
1.最後の接炎の後、60秒以上燃焼を続ける試料がない
2.試料の下方に置かれた脱脂綿を発火させる燃焼する粒子を落下させる試料がない
3.試料に穴が開いても良い
難燃性プラスチックの注意点
プラスチックの主な構成元素は、炭素、水素、酸素です。
プラスチックにバーナーを接炎すると熱分解して可燃ガスを発生して燃焼します。
燃焼度合いは、プラスチックの種類（分子構造）によって異なります。
難燃剤を添加しない汎用性プラスチックの一般グレードにおいて、
ＨＢ（遅燃性）の材料は、ＰＭＭＡ、ＰＥ、ＰＥＴ、
Ｖ２（自己消化性）の材料は、ＰＣ、ＰＡ、ＰＶＣ
よく燃焼する材料は、ＰＳ、ＡＢＳ です。
よく燃焼するＰＳ、ＡＢＳでも塩素、ハロゲン等の難燃剤を添加すると、燃焼時に不燃性ガスを
発生する「難燃性Ｖ０」の材料に変更できます。
配電盤類の筐体は、汎用プラスチック（ＡＢＳ、ＰＰ、ＰＭＭＡ等）に難燃剤を加え、
適切な難燃性にして使用します。
しかし、難燃剤の添加は、衝撃強度をはじめプラスチックの基本物性を低下させます。
難燃性を満たし他の性能も満たすため、他材料の選択、厚肉化、形状など工夫してください。
以上 最後までお読みいただき ありがとうございました。
