寒冷地に通信機器を収納する筐体を製作しました。
寒冷地では機器の使用周囲温度は0℃以下になるので、
ヒーターによって使用周囲温度になるまで機器を暖めたいとの要求に対応しました。
ヒーター選定と、適切なヒーター配置について検討した結果を説明します。
盤用ヒーターの容量選定例
●盤から外に放出される熱量をヒーターで補うとして、盤用ヒーターの容量を算出する。
外気温と設定温度との差、盤表面積より盤用ヒーター熱量を選定する。
※ヒーターメーカーのカタログにも記載のある内容です。
手順1)盤内の設定温度と外気との温度差 ⊿T:℃
手順2)盤の表面積 A:㎡ (壁及び床に接している部分は除く。)
手順3)伝熱係数 K: 鋼板5.5W/㎡K、樹脂板3.5W/㎡K
手順4)必要容量 Q=A×⊿T×K
<計算例>
●盤内温度を目標温度以上になるようにヒーター容量を選定する。(結露防止用)
●計算条件
筐体材質 :鋼板製
筐体サイズ :縦1600x横600x奥行300 (mm)
設置状態 :自立形で背面を壁に固定、
最低外気温度:-5℃
盤内目標温度: 5℃
●必要容量
Q=A×⊿T×K
=2.1㎡×(5℃-(-5℃))×5.5W/㎡K=115.5
よって120W以上のスペースヒーターを選定する。
盤用ヒーター、機器、サーモスタットの配置例
<盤用ヒーターの配置例>
ヒーターと機器の配置イメージ図(寒冷地の場合)

・ヒーター上側中央 が最も高温です。
・ヒーター左右 の温度上昇値は小さく 広がりません。
・ヒーター下側 の温度上昇はほとんど 見られません。
↓
①昇温させたい機器の下側にヒーターを配置します。
②ヒーターはヨコ向きに配置します。
(タテ向きには配置すると機器に当たる熱気の量が減少します。)
③機器より幅が広いヒーターを選定します。
④盤内全体を温めるために、配線スペースを許容される限り、下側面に配置します。
<機器の配置例>
外気温が低いとキャビネットの外郭を通じて放熱します。
→機器は中央よりに配置して、外気の影響を受けにくくする。
<サーモスタットの配置例>
サーモスタットは、温度を安定させたい機器の直近下側に配置します。
温度設定は復帰温度差(3℃)誤差温度(3℃)とヒーターON OFFによる温度変化を加味します。
(参考1)サーモスタットは、液体膨張式(液膨式)が多く用いられます。
液膨式の構造は、感熱部に封入されたオイルが周囲温度の変化に対し
膨張・収縮し接点の開閉動作を行います。
熱電対式の温度感知と比較するとコストは安いが動作が遅いです。
(参考2)ヒーター(30W)の取付方向と温度上昇値⊿Tの関係
図より、水平位置取付の上面が一番温度上昇することがわかります。

盤用ヒーターの取付注意点
- ヒーターの最高発熱温度を把握して設計します。
ヒーターは水平、壁取付けタテ、ヨコの取付け方向により発熱温度が変わります。
メーカーが公表している(又はメーカーに請求する)温度上昇値を参考にします。 - 鋼板・樹脂部品との間は、十分なスペースを確保して熱変形を防止します。
鋼板側面からはスペースを最小10mmあけます。・・・外気の影響を機器に及ぼさない。
樹脂部品からは35mm以上あけます。・・・・・・・・樹脂部品の熱変形防止 - 電源やヒーター周辺の配線に耐熱電線を使用し、昇温防止装置(安全回路)を組み込む。
(メーカー推奨です。実際の温度上昇値を参考に判断する。) - 盤内の対流をスムーズにするため、上面及び下面から約50mmのスペースを設ける。
(メーカー推奨です。目安ととらえ、試験で温度上昇を確認できればよいです。)
まとめ
当初の目論見と異なり、ヒーターの熱は水平面状にあまり広がりませんでした。
サーモグラフィカメラにより温度分布を可視化して、短時間で最適配置を確認できました。
上記の例を参考に設計し、サーモグラフィカメラによる検証をお勧めします。
参考: 篠原電機(株)ホームページ (スペースヒーター容量算定目安)
最後まで見ていただき ありがとうございました