部品の強度やたわみは検討されますが、レンチやスパナの締付けスペースは考慮されていますか?🐯
試作を組立中にボルトの締付けができず、また締め難く「しまった」と思うことはないですか?🐯
ボルト使用の設計場面は多いですが、ねじ締結の締付けスペースは忘れがちです。
6角ボルトの締付けスペースについて説明します。
用語の解説
レンチは、ボルトやナットを締め付けて固定したり緩めて外す作業(締緩作業)を行う工具の総称。
ボルト側面の6ケ所に力が加わるので、ボルトヘッドの痛みが少なく強い力で締付けできます。
開放型であるが可変型のモンキーレンチをはじめ六角棒スパナ六角レンチと呼ばれることが多いなど「レンチ」のほうを総称的に使います。
調整可能で挟む形状の物をレンチ、固定のサイズの物をスパナと呼ばれています。
スパナは、先端が開放されており、横方向からレンチを挿入できるのが特徴。
ボルトヘッド側面の二ヶ所にのみ力が集中するので、強い力で締めるとボルトヘッドを傷めることがあります。主として軽度な用途や工具の入りにくい箇所での早回しに利用します。
ソケットレンチは、ボルトの頭に嵌めるソケットとそのソケットを回すハンドルから成り立ちます。
スパナ/めがねレンチの寸法(JISB4630スパナ JISB4632めがねレンチ)
ねじ径 | 二面幅 S | スパナ(JIS) | スパナ(市販品) | めがねレンチ(JIS) | めがねレンチ(市販品) | ||||
最大D | 最大T | 最大D | 最大T | 最大D | 最大T | 最大D | 最大T | ||
M5 | 8 | 22 | 5 | 18 | 5 | 15 | 7 | 13 | 6 |
M6 | 10 | 26 | 5 | 22 | 5 | 17 | 8 | 16 | 7 |
M8 | 13 | 33 | 7 | 28 | 7 | 23 | 10 | 19 | 8 |
M10 | 17 | 41 | 8 | 36 | 8 | 27 | 12 | 25 | 9 |
M12 | 19 | 45 | 9 | 40 | 8 | 30 | 13 | 28 | 9 |
M16 | 24 | 56 | 11 | 50 | 9 | 38 | 17 | 35 | 10 |
M20 | 30 | 68 | 13 | 62 | 11 | 44 | 18 | 44 | 18 |
スパナ/めがねレンチの締付けスペース
●ボルトの二面幅に合ったスパナ/めがねレンチを選択します。
ボルト位置は、締付けに干渉しない様注意し、近くに壁があれば、スパナ/めがねレンチの
径に合わせ、12~35mm離します。
(注)スパナは口径部が柄に対して15°の角度を持っています。
スパナを裏表交互に使えば15°のスペースで使用可能ですが作業性が悪すぎます。
裏表を変えなくても締結作業ができるように30°以上の回転スペースを確保しましょう。
ソケットの寸法 (JIS B 4636ソケットレンチ)
ねじ径 | 二面幅 S | 直径 D1 最大 | 差込角 6.3 | 差込角 9.5 | 差込角 12.7 | |||
直径 D2 | 長さ L | 直径 D2 | 長さ L | 直径 D2 | 長さ L | |||
M5 | 8 | 13 | 13 | 22 | 17 | 26 | 22 | 35 |
M6 | 10 | 16 | 13 | 24 | 17 | 26 | 22 | 35 |
M8 | 13 | 21 | 16 | 24 | 18 | 27 | 22 | 35 |
M10 | 17 | 25 | — | — | 19 | 30 | 23 | 37 |
M12 | 19 | 28 | - | - | 21 | 32 | 24 | 38 |
M16 | 24 | 36 | - | - | - | - | 28 | 41 |
M20 | 30 | 44 | - | - | - | - | 32 | 47 |
ラチェットハンドル+ソケットの締付スペース
●ボルトの二面幅に合ったソケットを選択し、設計時には締付けに干渉しない様注意します。
ソケット近くに壁があれば、ソケットの半径に合わせ、12~17mm離します。
ラチェットハンドルが壁に干渉する場合は、ハンドル頭の半径17mm程度離します。
注 市販ラチェットの送り角度は10°以下で、もっと小さな送り角度もあります。
作業性を考慮し30°以上の回転スペースは確保しましょう。
●ソケット、ハンドルの選定
①差込角のサイズに迷ったら12.7のソケットを選ぶ。
②ラチェットハンドルとソケットは同じ差込角を選ぶ。
③ラチェットハンドルとソケットはなるべく同じメーカーを使用する。
差込角 | 区分 | D | H | T | L |
6.3 | JIS | 最大25 | 最大27 | - | 最大150 |
市販例 | 20 | 20 | 10 | 145 | |
9.5 | JIS | 35 | 最大36 | - | 最大220 |
市販例 | 27 | 27 | 13 | 200 | |
12.7 | JIS | 最大45 | 最大36 | 最大22 | 最小240 |
市販例 | 32 | 34 | 16 | 240 |
まとめ
●スパナ/レンチの回転スペースは30度以上確保します。
●めがねレンチの締付けスペースはスパナより小さい。
めがねレンチJISを参考にすると、市販工具で締付け可能な最小寸法の製品を設計できます。
●ラチェットハンドルの締付けスペースは、めがねレンチより小さい。
端からボルト中心まで17mm離せばM20のボルトを締付けできます。
ラチェットハンドルは差し込み角12.7を想定します。
参考資料
TONE株式会社「知っとかないTONE」
京都機械工具株式会社 「工具の基礎知識」
JISB4633 十字ねじ回し
JISB4636 ソケットレンチ
JISB4630 スパナ
JISB4632 めがねレンチ
以上 最後までお読みいただきありがとうございました。