生産量が増加したり新規開発商品を企画する際、どうやって生産手段を選択しますか🤔?
生産手段を選択する方法のひとつとして「原価分岐点」の利用があります。
原価分岐点操業度 と 予定操業度 の 大 小 により生産手段を選択します。
固定費が高い生産手段ほど操業能力が大きく、単位当たり変動費が少なくて済みます。
ここでは、各生産手段の 固定費、変動費 より「原価分岐点」を求め、予定操業度と比較して
生産手段を選択する方法を紹介します。
初級~中級の板金設計者の方に情報提供をします。設計の一助になれば幸いです。
固定費と変動費
●原価分岐点分析は、固定費と変動費に分けて考えます。
部門別に材料費、労務費、経費の各要素ごとに調査し、固定費、変動費に分けます。
固定費は操業度が増大しても変わりませんが、単位原価は低減します。
1-1.固定費 F・・・操業度が増減しても変わらない。
売上高や生産高に関わらず、必ず発生する費用です。
削減が困難で、変動費より小さい方が良いといわれる。
原価償却費、保険料、賃借料、固定資産税、賃金給料、手当、支払利息 等の項目があります。
1-2.変動費 V・・・操業度に比例して増減する。
材料費、残業賃金、運賃、加工費、光熱費、外注加工費 等の項目があります。
1-3.総原価と単位原価
総原価 C = 固定費 F + 変動費 V
単位原価 Cu = F/x+Ⅴ/x = F/x+v
x:操業度 v:変動比率=Ⅴ/x
1-4.操業度
生産設備能力の利用度合を指し、可能な生産量に対する実際生産量の比率で表します。
稼働率ともいいます。
原価分岐点の求め方
2-1 原価分岐点の操業度 x0 を算出する
第1案 C1 = F1 + v1X
第2案 C2 = F2 + v2X
C1=C2とする
x0=(F1-F2)/(v2ーv1)
=(固定費)/(変動費)
2-2 予定操業度と原価分岐点より選定する。(図1参照)
予定操業度が
原価分岐点以下・・・第2案(C2)を選定する
固定費が 小 変動費 大 を選択する。
原価分岐点超・・・・第1案(C1)を選定する
固定費が 大 変動費 小 を選択する。
計算例 製造設備を比較する
例題 500台生産する製品の製造設備2案について検討中です。
表1の原価構成のとき A案 と B案 のどちらが適正ですか?
項目 | 単位 | A案 | B案 |
原材料使用量 | L/台 | 0.6 | 1.0 |
原材料単価 | 円/L | 300 | 300 |
直接作業時間 | 分/台 | 15 | 25 |
労務費 | 円/時間 | 6,000 | 6000 |
電力・消耗品費 | 円/時間 | 120 | 120 |
設備維持費 | 円 | 400,000 | 20,000 |
項目 | 単位品 | A案 | B案 |
原材料費 | 円/台 | 180 | 300 |
直接労務費 | 円/台 | 1,500 | 2,500 |
電力・消耗品費 | 円/台 | 30 | 50 |
変動費 | 円/台 | 1,710 | 2,850 |
固定費 | 円 | 400,000 | 20,000 |
答 固定費、変動費 より原価分岐点x0を算出する。
x0=(FA-FB)/(vB-vA)
=(400,000-20,000)/(2,850-1,710)=334(台)
予定操業度 500台 は 原価分岐点 334台 より多い。
従って、 固定費が大きい 案A が適正です。
※予定操業度の信頼性について余裕をみておいた方がよいです。
例題2の予定操業数は 10% の誤差を見て 300台~370台 としました。
計算例 内作か?外作か?
例題 500台/月生産する製品を内作 (A案) か、協力業者にて製作 (C案) するか検討中です。
表3の原価構成のとき、A案 と C案 のどちらが適正ですか?
項目 | 単位 | A案 | C案 |
原材料使用量 | L/台 | 0.6 | 1.2 |
原材料単価 | 円/L | 300 | 300 |
外注加工費 | 円/台 | - | 2,000 |
直接作業時間 | 分/台 | 15 | - |
労務費 | 円/時間 | 6,000 | - |
設備稼働費 | 円/時間 | 200 | - |
設備維持費 | 円/月 | 400,000 | - |
項目 | 単位品 | A案 | C案 |
直接材料費 | 円/台 | 180 | 360 |
外注加工費 | 円/台 | - | 2,000 |
直接労務費 | 円/台 | 1,500 | - |
設備稼働費 | 円/台 | 50 | - |
変動費 | 円/台 | 1,730 | 2,360 |
固定費 | 円/月 | 400,000 | 0 |
答 固定費、変動費 より原価分岐点x0を算出する。
x0=(FA-FC)/(vC-vA)
=(400,000-0)/(2,360-1,730)=635(台)
予定操業度 500台 は 原価分岐点 635台 より少ない。
従って、 固定費が小さい 案C が適正です。
※予定操業度の信頼性について余裕をみておいた方がよいです。
例題2の予定操業数は 10% の誤差を見て 570台~700台 としました。
原価分岐点分析の使用例
●使用例を記載します。
増産可否の判定
最適操業度の判定
操業可否の判定
最適加工系列の判定
最適製造設備、機械の判定
機能を果たす方法選択の判定
まとめ
各生産手段の 固定費、変動費より「原価分岐点」を求め生産手段を比較分析できました。
固定費の高い生産手段ほど操業能力が大きく、単位当たり変動費が少なくて済みます。
実際に「原価分岐点」を利用して生産手段を選択してみてください。
最後まで見ていただき、ありがとうございました。