熱対策のために屋外制御盤にファンを取付けた場合、隣家から騒音苦情が来る場合があります。
騒音規制、ファンの騒音対策 について説明します。
騒音の規制・基準
生活騒音の基準は、都道県知事、市長が設定します。
詳細は、制御盤を設置する地域の騒音条例に従ってください。
例として 以下に「東京都の条例」と「騒音の大きさの目安」を示します。
住宅地(第1種区域)の騒音規制は厳しいので注意してください。
<東京都の騒音に関する条例>
日常生活等に適用する騒音の規制基準 条例第136条 別表13 2022年9月7日(単位:dB)

<騒音の大きさの目安 (引用:深谷市ホームページ)>

ファンの「最大風量」と「騒音」の例
●盤用ファンの「最大風量」と「音圧」に関する例を示します。
住宅地域(夜間)の騒音規定が40dBの場合、119x119x38 のファン(43dB)を取付けると
規定値を超えるので対策を検討します。
→案1)同じサイズのファンでも静音タイプ(33dB)は、標準タイプ(43dB)より
音圧レベルはずいぶん下がります。
同時に最大風量も下がるので、ファンを変更した際、温度上昇に支障ないか検討します。
→案2)風量が半分で音圧が小さいファンを2台使用すると、音圧を下げることができます。
※音圧は、+3㏈ で 1.4倍、 +6㏈ で 2倍
+10㏈ で 3.2倍、 +20㏈ で 10倍 に聞こえると考えてください。

騒音による改修例
●状況
住宅の壁面にファン付の制御盤を取付けたところ、制御盤の位置が隣家の窓付近でした。
・ファン自体の音圧(55㏈)が大きい。
・夜間にファンが稼働する機会があり、睡眠妨害になるとの苦情があった。
との理由より、改修を行いました。
●改修内容
・ファンを静音タイプに変更し、制御盤と隣家の間に遮蔽板を設けました。
●反省点
現場改修は、相手への謝罪から始まり、手間が掛かかりました。
設置場所の騒音規制にも配慮した制御盤設計が欠けていました。
また、設置時に周囲への影響確認に抜けがありました。
ファンの騒音対策
●現場対応できる案 と 盤を改造する案を示します。
現場対応1.
ファンを標準タイプから静音タイプに変更する。
温度上昇が許されるなら、風量を抑えて騒音が下がる静音タイプに変更します。
現場対応2.
防音壁を設置します。
制御盤と隣家の間に防音板を設けたり、風の向きを変えて音量を下げます。
現場対応3.
盤と取付面との間にゴム等の緩衝材を取付ける。
盤の振動が壁を伝わり、部屋の中で唸るような音が発生する場合があります。
盤改造1.
風量の大きなファン1個から、風量が少なくても音圧が低い(30㏈程度)のファン複数個に
変更します。
設計段階から、音圧の大きなファンを使用せず、複数のファンを使用して音圧を抑えます。
盤改造2.
ON/OFFの切替式から回転数を変更できるファン(PWMコントロール)に変更します。
ON/OFFの切り替え音が耳障りになります。
負荷状態に応じてファンの回転数を制御できるので、ファン停止、低速回転にできます。
盤改造3.
筐体を大きくしたり、放熱板を設けたり盤の放熱量を大きくし放熱をファンに頼らない。
(参考)同じ風量で ファン1台と2台の音圧レベルの差
●ファンの風量は回転数に比例します。
同じ風量を発生させるのに
①ファンの回転数を2倍にした場合
②ファンを2台使用した場合 の音圧レベルを比較します。
SPL1:ファン1の音圧レベル40㏈ N1:ファン1の回転速度
SPL2:回転速度を2倍にしたファン2の音圧レベル N2:ファン2の回転速度
SPL3:ファンを2台使用した際の音圧レベル
<計算例>
①ファン回転数を2倍にした際の音圧
SPL2=SPL1+50xlog(N2/N1)
=40+50xlog2 ※Log2=0.3
=40+50x0.3=55㏈
②ファンを2台使用した際の音圧
SPL3=10xlog(10SPL1/10+10SPL1/10)
=10xlog(1040/10+1040/10) =10xlog(104+104)
=10xlog(2x104) =10x(log2+log104) ※Log2=0.3
=10x(0.3+4)= 43㏈
<結果>
ファン1台で回転数を2倍は 55dB、2台使用では43dBでした。
同じ風量を発生させるなら、2台使用の方が音圧レベルが小さく済ます。
参考資料:三洋電気株式会社ホームページ「ファンの基礎知識」
最後に
以上 最後までお読みいただきありがとうございます。
現場での対応は大変です。
「ユーザー」「工事業者」「施主」「製造」に配慮した設計で問題点を解消しましょう。