部品寸法は許容差内なのに組立できなかったことはありませんか?
試作時には問題なかったのに、量産時に組立不良や動作不良が生じたことはありませんか?
部品寸法の入れ方によって、許容差ギリギリとかバラツキが大きいと組立時に不具合が生じることがあります。
公差設計は製造によるバラツキの許容範囲を製品仕様やコストなどから総合的に考えることです。
適切な寸法の入れ方をしていれば不具合発生を避けることができます。
設計不良防止のために公差設計を実施しましょう。
ここでは、寸法記入の注意点について説明します。
初級~中級の板金設計者の方に情報提供をします。設計の一助になれば幸いです。
寸法記入の注意点(一般事項 編)
「JIS B 0001 機械製図 11.1一般事項」 に公差に関わる記載があります。
設計の意図を製造現場に正しく伝えるため、以下の項目を参考にしてください。
※「JIS B 0001 機械製図」を購入して読み直し、是非とも作図の見直しをお願いします。
図面は、設計者の意図を作業現場に伝える大切なツールです。
A.機能、製作、組立を考えて、必要不可欠な寸法を過不足なく指示する。
機能・製作・組立に必要な寸法に漏れがない
B.大きさ、姿勢及び位置を明確に表すために必要な寸法を記入する。
F.必要な寸法を記入する。計算させない。
G.加工又は組立の際に、基準となる形体を基にして寸法を記入する。
寸法測定容易な面基準、穴基準が望ましい。
H.寸法は、工程ごとに配列を分けて記入すると加工漏れの防止となる。
I.関連する寸法は、一か所にまとめて記入する。
L.機能上必要な寸法には寸法の許容限界を指示する。
M.寸法のうち、理論的に正確な寸法については寸法数値を長方形の枠で囲む。
参考寸法は寸法数値に括弧を付ける。
寸法記入の注意点(寸法の配置 編)
「JIS B 0001 機械製図 11.5一寸法の配置」 に公差に関わる記載があります。
設計の意図を正しく製造現場に伝えることを念頭に置いて配置を選択してください。
1 直列寸法記入法(寸法を一列に連ねて記入)
直列に連なる個々の寸法公差が逐次累積してもよい場合に適用する。
下図は、全体長さは重要でないが、穴間の距離が重要と読み取れる。
2 並列寸法記入法(基準から各位置までの寸法を並列に記入)
並列寸法記入法は、並列に寸法を記入する。
個々の寸法に与えられる公差が他の寸法の公差に影響を与えることはしない。
この場合、共通側の寸法補助線の位置は、機能・加工などの条件を考慮して適切に選ぶ。
下図は、穴間の距離は重要ではないが、左端からの距離が重要と読み取れる。
3 累進寸法記入法
累進寸法記入法は、並列寸法記入法と同じ意味を持ちながら、一つの形体から次の形体へ寸法線をつないでいる。
一本の連続した寸法線を用いて簡便に表示することが可能である。
寸法の起点の位置は〇で示し、寸法線の他端は矢印で示す。
寸法数値は寸法補助線に並べて記入するか、矢印の近くに寸法線の上側にこれに沿って指示する。
寸法記入例
基準寸法の入れ方で寸法が変わる。
設計の意図を図面に表してください。
下図のA寸法が重要でも、左図ではAは±1、右図ではAは±2 と異なる。
まとめ
寸法の入れ方によって公差計算も変わります。
設計内容を、製作現場に間違いなく伝達することが大切です。
「寸法記入の注意点」を読み込んで適切な寸法記入をしてください。
参考文献
JIS B 0001 機械製図
最後まで見ていただき、ありがとうございました。