部品寸法は許容差内なのに組立できなかったことはありませんか?
試作時には問題なかったのに、量産時に組立不良や動作不良が生じたことはありませんか?
部品寸法が許容差ギリギリとかバラツキが大きいと組立時に不具合が生じることがあります。
公差設計していれば不具合発生を避けることができます。
設計不良防止のために公差設計を実施しましょう。
組立品の公差計算法には単純累積法(互換性の方法)と正規分布累積法(不完全互換性の方法)の2種類あります。ここでは、組立品の公差計算方法の紹介と計算例を説明します。
初級~中級の板金設計者の方に情報提供をします。設計の一助になれば幸いです。
組立品の公差計算法は2種あります。
1.単純累積法(互換性の方法)
バラツキの分布を考慮せず、各製品の上限、下限を合計する方法
2.正規分布累積法(不完全互換性の方法)
正規分布する部品を組み合わせ分散の加法性を利用する方法
項目 | 単純累積法(互換性の方法) | 正規分布累積法(不完全互換性の方法) |
考え方 | 最悪の組合せを考慮する | 各部品が正規分布でバラツクとの考えが前提 全ての部品が最悪ケースとなる確率は非常に少ない |
用途 | 少量生産、一品もの、事故が許容できない物 | 大量生産向き |
特徴 | 部品に高い精度を要求する 最悪状態でも品質を担保できる | 単純累積法より値が小さくなる 不良品がある確率で発生する |
計算 方法 | 例:公差が±a、±b、±c、±d、±e の5種類の部品を積み上げた時の全体公差✕。 ✕=a+b+c+d+e すべて±1のとき 1×5個 ⇒ X=±5 | 例:公差が±a、±b、±c、±d、±e の5種類の部品を積み上げた時の全体公差✕。 ✕=√(a2+b2+c2+d2+e2) すべて±1の時 √(12×5個)= √5 ⇒ X=±2.24 |
欠点 | 組立品の変動範囲を必要以上に広くとる 又は、個々の許容差を必要以上に厳しくする =管理・廃棄コストアップ | 各部品の正規分布が前提なので、不良品は生じる 生産数があれば不良率の予測は可能だが、少ないと予測しづらい |
組立における公差の合成(計算例)
●計算例:CとGの間を±0.5にしたい。DEFGの部品公差bの値をどう設定するか?
●単純累積法
0.4(部品B公差)+4b(部品D~Gの公差合計)=0.5(隙間の公差)
b=0.025
答 DEFGの各部品は±0.025の精度が必要
●正規分布累積法
分散の加法性を利用して算出する
0.42(部品B公差)+4b2(部品D~Gの公差合計)=0.52(隙間の公差)
4b2=0.52ー0.42
b2=0.0225 b=0.15
答 DEFGの部品は±0.15の精度が必要
●計算方法の違いで±0.025と±0.15と必要とする寸法精度に大きく差が生じました。
どちらの計算方法を使用するかは表1を参考に検討ください。
まとめ
組立品の公差計算方法には、
最悪の組み合わせを考慮する単純累積法(少量生産向き)と
各部品が正規分布のバラツキを前提とした正規分布累積法(大量生産向き)の2種類あります。
値がかなり異なるます。用途に合わせてどちらを選択するか、独自計算方法を検討してください。
参考文献
栗山弘著 公差設計入門
最後まで見ていただき ありがとうございました。