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配電盤類の塗装🐯ナイロンコーティングの採用

塗装

ナイロンコーティングは、低摩擦抵抗表面平滑性耐熱性耐薬品性に優れたコーティングです。
コーティング方法は、
 ①被着物を加熱します。
 ②流動状態にしたナイロンの槽中に加熱した被着物を浸漬します。
 ③槽から引き上げます。
 ④熱がさめるとると、被着物にナイロンの厚膜が形成しています。

性質を部品に応用して設計の選択肢を増やしましょう😊。
ここではナイロンコーティングの性質、工程、設計上の注意点および採用例を紹介します。

配電盤の使用例

例)ハンドルの止め金ロット棒先端摺動する部分にコーティングする
 止め金とボデーが擦れる部分の摩擦抵抗を低く抑えハンドルの操作力を小さく抑える。
 ロット棒も動く部分の摩擦抵抗を減少させる。

例)レバーケーブル固定具手・電線が触れる部分にコーティングする
 バリや端面の金属を厚膜の樹脂で覆い隠すことができ、人が触れても怪我しない
 ケーブルを固定する部分をコーティングし、電線を結束する際に傷つけない

自動ラインで塗布する業者もあれば、人手で浸漬する業者もいます。
厚膜を手軽に付着できます。 自動車部品の使用例を載せます。

性質

●被塗物の入りにくいところ、及び内外面を同時にコーティングできることが特徴です。
●ナイロンコーティングの物性例は表1を参照ください。

特性規格単位
溶融温度ISO11357186
比重ISO1183(20℃)g/cm31.04~1.25
飽和吸水率20℃/65%RH
20℃/100%RH

0.9~1.1
1.6~1.9
表面硬度ShoreD ISO868ShoreD75
表1 ナイロンコーティング物性例

●耐摩耗性、耐衝撃性、耐塩水性は使用を想定した試験方法、目標値を設定するとよいです。
 例)止め金具の例
 1)低摩擦抵抗・・・コーティングにより摩擦係数は0.2(鉄の1/2)になり傷は減少した。
 2)耐塩水噴霧性能・・・96時間で赤錆発生なし。
 3)耐熱性・耐寒性・・・異常なし。
 4)温湿度耐久性・・・・50℃95%の環境に24時間放置で異常なし
 5)硬度・・・B~2B(相手の塗膜より柔らかいため、本体の塗装に傷はつかない)

●ナイロンコーティングは耐薬品性に優れています。以下の薬品には40℃使用可です。
  アセトン、アンモニア水、塩化カルシウム、硫酸銅、果汁、グリコース、グリセリン
  グリース、水素、乳酸、水銀、油、海水、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム

流動浸漬法の工程

●ナイロンコーティングの流動浸漬法は以下の工程で加工します。
 1.前処理 (被着物表面の汚れを除去します)
    ⇒ 2.前加熱(被着物をナイロンの融点以上に加熱します)
        ⇒ 3.浸漬(槽下部から吹き上げられる空気で流動状態にしたナイロンパウダーの
             中に、予熱した被塗物を浸漬します)
           ⇒ 4.冷却(パウダーが被塗物の表面に付着すると溶融して塗膜になる。)
              ※外観は冷却が水冷だと光沢有、空冷だとマット仕上げとなる。

●管理項目例
 1.めっき後乾燥時間 (例:24時間以上経過後)
 2.加工設定項目   (例:タクトタイム、予熱炉温度、パウダー槽上昇時間、エア流量)
 3.生産開始時確認項目(例:浸漬深さ、膜厚)
 4.検査項目     (例:ブツ、未コーティング) 

設計上の注意点

1.使用可能な材質:金属および熱変形しない材質とする。(300℃に加熱するため)

2.被塗物の大きさ:浸漬する槽のサイズによる。 槽の大きさを確認してください。

3.塗装膜厚   :250μm~500μmと考える。
        ・量産前に最小~最大膜厚のサンプルを製作し工程能力を確認する。
        ・余熱時間と浸漬時間で管理するしかないので、微妙な膜厚指定はできない。

4.塗装範囲   :浸漬範囲の設定が必要です。

5.被塗形状    ①吊り下げ用の孔が必要(自動ラインの場合)
         ②被塗物に曲げや孔を設ける。(劣化してもコーティングが脱落しないため)
         ③マスキング不要。(マスキングは可能だがコストアップ要因となるため)
         ④重要な孔はコーティングしない。(コーティングした孔の寸法管理は不可)

6.被塗物表面処理:めっき後コーティングした場合、めっきの耐食性は劣化するので確認する。
         ※コーティングで300℃に加熱するため電気亜鉛メッキの防錆力は低下する。
         ※ジンケート浴の電気亜鉛メッキと相性が良いといわれる。

7.加工先選定  :コスト優先多品種少量生産ならば、経費の安い小企業に依頼すると良いです。
         手作業で小回りが利く対応をしていただけます。
         ただし、耐食性に関わるめっきとの相性確認が必要です。
         耐食性が重要、多量生産及び初めてのコーティング設計品であれば、めっきも
         コーティングも両方設備のある企業に依頼すると品質が安定し安心です。

ナイロンコーティングの採用例

用途分野使用例特性
自動車部品電線クランプ
シートバネ
安全ベルトバックル
耐摩耗性、柔軟性
消音性、密着性、耐衝撃性、耐油性
摺動性、風合
家電食洗器
アンテナ部品
耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性、耐水性
耐候性、耐食性
スポーツボート
スノーボート
耐海水性、耐衝撃性、耐候性
耐寒性、耐衝撃性、耐候性
その他工具
ショッピングカート
耐熱性、耐油性、耐衝撃性、耐摩耗性
耐摩耗性、風合、耐衝撃性、無毒性
表2 ナイロンコーティング採用例

まとめ

ナイロンコーティングは、低摩擦抵抗表面平滑性耐熱性耐薬品性に優れたコーティングです。
金型等の設備費が不要です。
配電盤類の摺動する部品や保護する部品の表面処理方法として設計に役立ててください。

<参考文献> 
アルケマ株式会社製 リルサンT(PA11) 資料

最後まで見ていただき ありがとうございました。

ガオ

筐体開発・設計に関わる情報を提供します。
初級設計者の一助になれば幸いです。

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