どぶずけ品の設計注意点は何でしょうか🤔?
「どぶづけ」は、450℃で溶融状態になった亜鉛槽内に鋼製品を浸漬させるめっき方法 です。
溶融亜鉛に浸漬させるため、空気の逃げ、亜鉛の抜け、残留応力による変形への対応等、
「どぶづけ」特有の注意点があります。
ここでは、溶融亜鉛メッキ処理を採用する際の設計注意点について説明します。
初級~中級の板金設計者の方に情報提供をします。設計の一助になれば幸いです。
溶融亜鉛めっきの特徴
1.耐食性に優れる
保護皮膜作用と犠牲防食作用により腐食から防ぐ。
①保護皮膜作用:亜鉛表面に緻密な酸化皮膜が生成し保護皮膜となって腐食の進行を抑える。
②犠牲防食作用:亜鉛めっき皮膜にキズが生じ、素地が露出した際、周囲の亜鉛が溶け出して
電気化学的に保護し、鉄の腐食を抑制する。
2.密着性に優れる
亜鉛と鉄の合金層により強固に密着し、衝撃、摩擦などによって剥離しない。
3.経済的である
長期間の防食効果を保ちメンテンナンスフリーで、最も低コストな処理です。
溶融亜鉛めっき(付着量)の選定
溶融亜鉛めっきの種類は、付着量及び適用例を参考に選定する。
記号 | 付着量g/㎡ | 適用例(参考) | 平均めっき厚μm |
HDZ 35 | 350以上 | 厚さ1mm以上2mm以下の鋼材・鋼製品 径12mm以上のボルト、ナット及び厚さ2.3mmを超える座金類 | 49以上 |
HDZ 40 | 400以上 | 厚さ2mmを超え3mm以下の鋼材・鋼製品及び鋳鍛造品類 | 56以上 |
HDZ 45 | 450以上 | 厚さ3mmを超え5mm以下の鋼材・鋼製品及び鋳鍛造品類 | 63以上 |
HDZ 50 | 500以上 | 厚さ5mmを超える鋼材・鋼製品及び鋳鍛造品類 | 69以上 |
HDZ 55 | 550以上 | 過酷な腐食環境下で使用される鋼材、鋼製品及び鋳鍛造品類 | 76以上 |
設計注意点
1.部材は一度づけでめっき可能な大きさにする
部材めっき業者に部材の最大寸法と最大重量を確認する。
理由:一度に槽内にはいらない二度づけはめっきやけの原因となる。
2.厚い方の肉厚は、薄い方の2倍以下にする。
理由:溶融亜鉛や冷却水に浸漬する際、板厚に差があると歪が生じることがある。
温度上昇速度は板厚によって変わる。板厚差が大きいと浸漬時及び冷却時に熱膨張・
冷却時に 収縮違いが生じて変形や割れの原因となる。
3.表面状態の異なったもの、異種金属の組み合わせはめっきできない。
理由:それぞれの前処理、めっき条件がことなるため均一なめっきはできない。
4.密閉部品には空気抜きを設ける。
理由:密閉部品は浸漬できず、内部に水があった場合、急激に膨張し爆発する危険がある。
5.空気が溜まる。亜鉛が溜まる部分を生じさせない。
・めっき槽に浸漬する際に空気が溜まらない形状。引き上げる際に亜鉛が溜まらない形状とする。
・管の場合、両端とも内径に等しく開放されたものが最も望ましい。
・両端は閉鎖された断面積の30%以上を開放して部材の浮き上がりを防止する。
直径が76mm未満は45%以上とする。
・向かい合った2面には対角に通気とたれ切り用の孔を設ける。
・補強板(三方向が囲まれる隅角部)には隅に亜鉛、及び空気流出用の亜鉛が溜まらない孔や
切り欠き(スカラップ)を設ける。切り欠き寸法は30m㎡以上とする。
理由:鋼(7.85)と亜鉛(6.80)の比重差が小さく沈みにくい。
空気たまりができると浮力が生じて亜鉛に浸漬できない。
閉鎖部端面の開口部を大きくし、内部への亜鉛の流入流出を阻止する部品は設けない。
6.隅肉溶接は全溶接する
理由:溶接継目を断続溶接するとめっき工程中の酸やフラックス液が合わせ目内部に侵入し、
その液がめっき後にしみだし、不めっき部が生じる。
7.大きなプレートは溶接しない。
板厚違いを2枚重ねて隅肉溶接する場合、重なる部分の寸法を400㎠以下とする。
プレート面積が大きい場合は、それぞれめっきし、その後ボルト接合する。
溶接部の残留応力を極力減少する。溶接が減少すれば歪も小さくなる。
理由:温度分布による熱膨張または熱収縮によりプレートが変形する。
8.最小溶接長さ溶接長さは50mm以上とする
理由:熱変形により溶接ビードに亀裂が生じる恐れがある。
雌ねじ径 | オーバータップ量 |
M10 | +0.6 |
M12 | +0.8 |
M16 | +0.8 |
9.ねじ加工はできるだけ避ける
やむおえず、ねじ加工する場合は以下に従う。
①めっき後余分な亜鉛を除去
タッピンによるねじさらいを行う。
②小物は遠心分離機でたれを切る
③ネジ部にはマスキング処理を行う。
④オーバータップを用いる。
ボルト径(雄ねじ)は標準のままで、
ナット径(タップ径)をオーバータップ(表2)とする。
⑤ボルト取付穴径には+0.5mmのクリアランスを設ける。
めっき厚が標準より厚いため∔0.5mm拡大する。
⑥勘合部は直径で1.6以上のクリアランスを設ける。
シャフト、ヒンジなどの可動部は分解してめっきする。
10.ケイ素、0.07%以上のリンが含まれる鋼材は、鉄-亜鉛反応に影響を及ぼすので注意が必要です。
SPHC、SPCC、SS400は ケイ素、リン の影響ありません。
成分は表2を参照ください。
材質 | C | Mn | P | S | 規格番号、名称 |
SPHC | 0.12以下 | 0.60以下 | 0.045以下 | 0.035以下 | JIS G 3131 熱間圧延鋼鈑 |
SPCC | 0.15以下 | 1.00以下 | 0.100以下 | 0.035以下 | JIS G 3141 冷間圧延鋼鈑 |
SS400 | ‐ | – | 0.050以下 | 0.050以下 | JIS G 3101 一般構造用圧延鋼鈑 |
参考文献
溶融亜鉛めっきの設計・製作上の留意点 (亜鉛めっき鋼構造物研究会発行)
鋼構造物の溶融亜鉛めっきQ&A (亜鉛めっき鋼構造物研究会発行)
「溶融亜鉛めっき工法」の手引き (社団法人日本溶融亜鉛鍍金協会発行)
鉛亜鉛需要開発センター ホームページ
最後まで見ていただき、ありがとうございました。