屋外に設置される配電盤類は、台風、突風、ビル風等による風圧力の影響を受けます。
壁や床に固定された配電盤類でも、風圧力によって転倒、扉開放・扉脱落の恐れがあります。
配電盤類設計の際に風圧力も検討しましょう。
風圧力に関して以下の規定があります。
・建築物の風圧力は「建築基準法施行令第87条」に規定があります。
・配電盤の風圧力は「JSIA-T1019 配電盤類の耐風圧力設計マニュアル」に規定があります。
・キャビネットの風圧力は「CA100 金属製汎用キャビネット」に規定があります。
設計事務所・工事業者から「配電盤類は風速〇〇㎧に耐えれるか?」の問合わせがあります。
ここでは、風圧力の用語、規定について紹介します。
風圧力検討の参考にしてください。
風速に関わる用語
●風速(平均風速)
1秒間に空気が移動する距離を表したものです。(㎧)
通常は地上10mで計測した10分間の数値の平均で示されます。
暴風域・・・平均風速25㎧以上の暴風
強風域・・・平均風速15㎧以上の強風
●瞬間風速
時間ごとに変化する風速を連続して計測した際の、ある瞬間の風速を表します。(㎧)
風速計が0.25秒間隔で計測した計測値を、3秒間平均したもの(12個の平均値)を瞬間風速と
呼んでいます。
●最大風速
最大風速は、10分間の平均風速の中で、ある時間内の最大値
「ある時間帯や期間に計測された平均風速の最大値」という意味の言葉です。
具体的には、「7月7日の最大風速は、25m/sだった」のように使われます。
◎台風の強さ(最大風速)
猛烈な 54㎧以上
非常に強い 44㎧以上54㎧未満
強い 33㎧以上44㎧未満
●最大瞬間風速
3秒間の風速計の平均値の中で、ある時間内の最大値。
最大瞬間風速は、一般的に最大風速の1.5~2倍ほどになると言われています。
●風の強さの目安

建築基準法施行令 第87条
<建築物の「風圧力」は「建築基準法施行令第87条」に規定されています。>
●風圧力Q が規定されています。
Q=qxCf
Q:風圧力
q:速度圧(N/㎡)
q=0.6・E・ Vo2
E:高さと周辺環境から決まる係数
国土交通大臣が定める方法で算出した値
E=Er2・Gf(建設省告示第1454号)
Er:平均風速の高さ方向の分布を表す係数
Gf:突風などの影響を考慮した係数、ガスト影響係数
Vo:基準風速(m/s)地域により30㎧~46㎧
地域によって国土交通大臣が定めた値 (沖縄県や島以外は40㎧以下です。)
沖縄県や島はVoが大きいので速度圧に注意してください。
Cf:風圧係数
配電盤の場合、実験値より風圧係数Cf=1.2が適当と考えます。
●建設省告示第1454号 にErとGfが規定されています。
Er:平均風速の高さ方向の分布を表す係数
→高さが高い程、風速が速い。
Gf:ガスト影響係数(地表面粗度区分と建物高さに影響を受ける係数)
→地表面粗度区分Ⅱ、Ⅲの環境である地域が多い
→障害物が少ない海岸線に近い方が風速が速い(海岸より200m以下)
→高層建築物(障害物)が多いほど「突風が平均風速の何倍か」が大きい
E:高さと周辺環境から決まる係数
例)高さ3m、風速40㎧の場合
地表粗度区分Ⅰは、海岸より200m以下で建物が高い場合です。

JSIA-T1019 配電盤類の耐風圧設計マニュアル (日本配電制御システム工業会)
<配電盤類の耐風圧設計について記載されています。>
●電気設備の耐風圧性能の基準
風圧力が配電盤に当った際に、据付固定部が許容力を確保していることを確認する。
1)盤の耐風圧性能は、盤が移動、転倒、落下しないように据え付けられている。
2)盤の基礎部のアンカーボルト、固定ボルト類の径・本数は、短期許容応力で検討し
耐風圧力を満足している。
●風圧力:Wfの算出
配電盤類の風圧力は980Paとします。
Wf=1/2xρxV2xCxg (Pa)
=1/2x0.125x402x2×9.8
=1960 (Pa)
ρ:空気の密度=0.125 (kg・s2/m4)
電気設備の技術基準の解説より(気圧1013x102Pa 温度15℃)
V:空気の速度=40 (㎧)
電気設備の技術基準の解釈より甲種風荷重の基準風速より
C:抗力係数=2
g:重力加速度=9.80 (㎧2)
●風荷重:Fwの算出
Fw=WfxS (N)
S:盤の受圧面積 (㎡)
●ボルトの判定
計算に利用するボルトの短期許容応力度は、建設設備耐震設計・施工指針より引用します。


CA100 金属汎用キャビネット(キャビネット工業会)
<キャビネットの耐風圧性能及び試験方法が記載されています。>
●耐風圧性能
屋外用キャビネットは、8.4.7によって試験を行ったとき、ドア又はカバーの開放,落下,
転倒,使用上有害な変形,破損を生じてはならない。
●試験方法
8.4.7 耐風圧性能試験
a)耐正圧性能強度試験
自立形キャビネットを設置状態にて固定し,前後面及び左右面へ荷重を加え、転倒・変形・
破損の有無を調べる。
荷重は、試験品の中央に<1200Pa(N/㎡)×(荷重を加える面の面積)>の荷重を加える方法
又は試験品の上端部に<1200Pa(N/㎡)/2×(荷重を加える面の面積)>の荷重を加える方法
のどちらかによる。
b) 耐負圧性能強度試験(ドア又はカバー)
ドア又はカバーを開放方向へ<1000Pa(N/㎡)×(荷重を加えるドアの面積)>の
負圧(引 張)荷重を想定し、次の試験にてドア又はカバーの開放・落下・変形・破損の
有無を調べる。
1) ドア: 荷重を加える位置は、ハンドル部とドア上下端面の中 間位置(上下 2 点)とする。
1.1) 片扉の場合 ハンドル側・蝶番側それぞれに引張荷重<1000Pa(N/㎡ )/2×
(荷重を加える面の面積)>を加える。
試験はハンドル側と蝶番側について個々に行っても可とする。
1.2) 両扉の場合 各々のドア面積に応じた引張荷重<1000Pa(N/㎡ )/2×
(荷重を加える面の面積)>を片扉と同様に加える。
試験はハンドル側と蝶番側につい て個々に行っても可とする。
ただし、ハンドル部については<1000Pa(N/㎡) /2×(荷重を加えるドアの面積)>の
引張荷重を左右 ドアへ同時に荷重を加えること。
2) カバー:カバー中央部又はカバー固定部に均等に<1000Pa(N/㎡ )×(カバーの面積)>の
引張荷重を加える。
●耐風圧性能・試験に対する解説
屋外における台風時などの強風に対して規定した。
風によって生じる力は風向きにより正圧、負圧の2通りが生じるため、それを想定した。
設計速度圧は、JEM 1425の1000Pa(風速40m/sに相当)を参考にした。
正圧の風力係数は、建築基準法(平成12年建設省告示第1454号)を参考にして1.2を採用した。
負圧の風力係数は、風洞実験結果などから1.0 とした。
まとめ
規定を参考にしていただき、現行風速40㎧で設計されている方は、
耐風圧60㎧へ上げて、より安全側で設計されるとよいと思います。
<理由>
・令和元年台風15号により、鉄塔の倒壊及び電柱の損傷事故が生じました。
経済産業省にて風速の安全率の見直しが「低圧1.2、高圧1.3、→ 2」へと見直されています。
・電気設備技術基準では、甲種風圧荷重の基準風速が40㎧、安全率1.5となっていますが、
国土交通省基準では、街灯に対する風速は60㎧と定められています。
これに合わせて、風速60㎧で検討するメーカが増えてきました。
<風速60㎧時の風圧荷重計算例 縦2200㎜、横1000㎜のドア>
●風圧力q(Pa)
q=9.8x1/2xpxv2
=9.8x0.5x0.125x602= 2205(Pa) 風速60㎧
p:空気密度(kgs2/m4) 標準大気状態:0.125 kgs2/m4
v:風速(m/s) 甲種風圧荷重の基準風速:40m/s
●風圧荷重P(kN)
P=CxqxA/1000
=1.2x2205x2.2/1000=5.82(kN) 風速60㎧
C:抵抗係数 ドア:1.2
A:受風面積(㎡) 縦2200㎜、横1000㎜のドアの場合
A=2.2x1.0=2.2(㎡)
最後までお読みいただき ありがとうございます。