生活を豊かにする電気ですが、何らかの原因で漏電が生じると感電・火災の危険につながります。
配電盤には漏電を含め配線の保護を行うため、漏電遮断器を使用します。
ここでは、漏電と感電について説明します。
漏電とは
漏電とは、電気配線や電気機器には絶縁処理がほどこされていますが、経年劣化・外的要因により
絶縁性が劣化し、電気が目的以外の回路に流れる状態をいいます。
漏電により、感電事故や漏電火災が発生する恐れがあります。
感電事故・・・人が触れると感電します。漏洩電流が大きいと感電死する場合があります。
漏電火災・・・漏洩電流が流れ続けると火災の原因になります。数100mA~数Aで火災になります。
漏電の原因
●漏電の原因は以下の通りです。
1.水濡れ
コンセントや電化製品が水に濡れてしまうと電気が水を伝わって外部に漏れだします。
2.電化製品の劣化
長期使用により絶縁処理された部分が劣化し漏電が生じます。
コードやプラグを長期使用したり、取扱いが悪いと破損が生じて銅線がむき出して漏電します。
3.家屋の劣化
屋根裏や壁の中に張り巡らした配線が、雨漏りで濡れて絶縁劣化を生じて漏電します。
5.塩害
塩分を含むと通電しやすくなります。電線や電化製品に海水が付着して漏電し易くなります。
6.小動物被害
家屋に浸入するネズミやペットなどの小動物が電気配線をかじり傷つけて漏電の原因となります。
7.たこ足配線
配線の無理な取り回しによりコードが傷つき、多数の機器接続で過電流を流して発熱して配線を
損傷させ、漏電の原因となります。
漏電対策
●漏電対策として漏電遮断器を設置します。(選定は、内線規程1375-2による)
配電盤・制御盤に漏電ブレーカーを設置する際は、その場所に応じた適切な感度電流が
設定されているかが重要です。
①人が触れるおそれのある場所では、感度電流は15mA、または30mAの高感度電流を
選ぶことによって、感電を防止できます。
②人の作業が関係していない箇所では感度電流を100mAに変更することで、
ブレーカーが不用意に動作することを抑えることができます。
感電事故時の人体への影響
●感電事故時の人体への影響は、身体に流れる電流の大きさにより異なります。
人体への通過電流値と影響は以下のようです。
●人体を通過する電流の危険度について、ドイツの「ケッペンの実験」が知られています。
ケッペンは、「大きな電流であれば短時間の人体通過でも危険であり、
小さな電流であれば長時間の人体通過も危険でない」 との考えから
人体通過電流(mA)x通過電流(s)=一定 であることを見出し
人体通過電流限界値 < 50(mA・s) を提唱しました。
例)100mAx1s=100mAsは危険、 100mAx0.1s=10mAsは安全
●ヨーロッパでは、ケッペンの提唱より安全率を見込み安全限界を30mAs以内としています。
日本でも同様に30mASを基本としました。
感電を防止する漏電遮断器は30mA、0.1sの高感度、高速形が一般的に採用されています。
●漏電感度電流の選定は、内線規程1375-2 にて定められています。
感電事故防止を目的として施設する漏電遮断器は、高感度・高速形のものであること。
(感度電流30mA以下、動作時間0.1秒以内)
※印は、電灯主幹のとき100A以下、動力主幹のとき50A以下で選定します。
感電防止対策
●感電防止の基本は、
「充電部を露出させないこと」、「露出した充電部に近づかないこと」 の2点です。
1.充電部を露出させない
配線覆いを取付ける。配線の破損・故障個所を改修する。
2.漏電遮断器の取付け
漏電遮断器を取付けた箇所より先の電気機器や配線に、絶縁の低下、損傷等により漏電が
発生した場合、速やかに電気の流れを止め、感電災害を未然に防ぎます。
また、労働安全衛生規則第333条により、水気や湿気がある場所、移動式の電動工具、
屋外のコンセント等には漏電遮断器の設置が義務付けられています。
3.接地工事
接地工事の実施により、漏電しても漏れた電流の大半はアース線を通じ地中に流れます。
万一、人体が漏電個所に接触しても、人体の電気抵抗はアースよりも大きいため、
アースにから電流が地中へ流出し、人体への影響を緩めることができます。
4.二重絶縁構造の電気機器の使用
二重絶縁構造の電気機器には「二重絶縁マーク」が表示されています。
表示製品は、電気用品安全法に基づく技術上の基準に適合、又は準じて
(電気用品安全法適用外の製品)製造されています。
5.絶縁用保護具、防護具の使用
当該作業を行う場合、事業者は、絶縁用保護具、防護具を作業者に使用させ、
作業者はそれを使用 しなければならないように義務付けられています。
尚、当該作業は「停電作業」を基本とするため、停電作業を行う場合は、停電させた電路へ、
不意に通電してしまう危険を防止するため、
「停電作業中、電源スイッチを施錠すること」「停電作業中である旨わかり易く表示すること」
「誤通電を防止するため、短絡接地器具を用い、アースを確実に行うこと」等が必要です。
※労働安全衛生規則「第二編 安全基準/第5章 電気による危険の防止/第4節 活線作業及び
活線近接作業」より
参考
東京電力パワーグリッド Webサイト
厚生労働省 職場の安全サイト より