配電盤類の塗装性能は、硬度、付着性、塩水噴霧性、耐アルカリ性、耐酸性、耐候性があります。
また、塗装性能は、塗料、塗装工程、鋼板の材質、および作業方法等により大きく異なります。
キャビネット工業会は、配電盤類の塗装仕様を、
「屋内仕様」「屋外仕様」
「耐塩仕様」「重耐塩仕様」
「耐酸仕様」「耐アルカリ仕様」 と 設置環境別に設定しています。
設置環境に適した塗装性能を有していないと腐食が生じる等クレームに繋がります。
塗装性能・塗装仕様を使い分けましょう。
また、汎用の塗装仕様として、キャビネットメーカーの塗装仕様が目安になります。
ここでは、配電盤類の塗装性能について説明します。
配電盤の塗装性能には、どんなものがあるか?
塗膜性能は、種々の項目があります。
配電盤類の塗膜性能は、以下のキズに対する抵抗 及び 耐環境性能を指定すれば適切です。
性能項目 | 性能説明 | 規格番号 |
膜厚 | 塗料には適正厚さがあります。 膜厚は薄過ぎると塗膜性能を出せません。 逆に厚過ぎるともろく強度が落ちます。 また、膜厚だけで防錆性能を評価できません。 防錆性能は、耐中性塩水噴霧性及び耐湿性試験で評価します。 | JIS K 5600-1-7 |
硬度 (えんぴつ硬度) | えんぴつの押し込みに抵抗する性質を硬度とします。 硬度が高い方がキズが付きにくい性質を表します。 配電盤類で多用されるポリエステル粉体塗料の硬度はH程度です | JIS K 5600-5-4 |
付着性 | 塗膜の下地面への密着性、剥がれにくさを表します。 塗料にとても大切な性能です。 | JIS K 5600-5-6 |
耐中性塩水噴霧性 | 防錆性能、塗膜の劣化を評価します。 塩水を噴霧して錆易さ、塗膜の膨れ、剥がれを評価します。 | JIS K 5600-7-1 |
耐アルカリ性 | アルカリの作用に対して変化しにくい塗膜の性質を表します | JIS K 5600-6-1 |
耐酸性 | 酸の作用に対して変化しにくい塗膜の性質を表します | JIS K 5600-6-1 |
促進耐候性 | 塗膜は屋外にさらされると日光・風雨等により劣化します。 この劣化傾向の一部を短時間に行うために太陽光の近似光を照射し、 水を吹付けて人工的な環境を作ります。 従来の試験結果との比較に用いられます | JIS K 5600-7-6 |
耐湿性 | 防錆性能を評価します | JIS K 5600-7-2 |
配電盤の塗装試験方法と評価方法
配電盤類の試験方法、評価方法はつぎの通りです。
試験項目 | 試験方法 | 評価方法 | 規格番号 |
膜厚 | 膜厚計にて測定する。 5か所の平均値で表す | 規定値以上である | JIS K 5600-1-7 |
硬度 | 規定硬さの鉛筆の先で 塗膜を引っかく | 鉛筆によるキズが生じない最も硬い鉛筆の硬度を 採用する | JIS K 5600-5-4 |
付着性 | カッターナイフを用いて、 塗膜に1㎜又は2㎜間隔に 素地に達する傷をつけ、 25升目の碁盤目をつくる。 碁盤目にテープを貼り付け、引き剥がす。 <膜厚とカットの間隔> ~ 60μm:1㎜間隔 61μm~120μm:2㎜間隔 | 碁盤目周辺の塗膜剥がれの状態を観察し、 分類0~5で評価する 分類0 どの格子も剥がれがない 分類1 カットの交点における塗膜の小さな剥がれ 明確に5%を上回らない 分類2 塗膜がカットの線に沿って又は 交点において剥がれている。 5~15%未満 分類3 塗膜がカットの線に沿って又は部分的、 全面的に剥がれている。 15~35%未満 分類4 塗膜がカットの線に沿って部分的、 全面的に大きく剥がれている。 35~65%未満 分類5 分類4以上 | JIS K 5600-5-6 |
耐中性 塩水噴霧性 | カッターナイフを用いて、 素地に達する傷を付ける。 塩化ナトリウム溶液を 密閉内に噴霧し、 表面状態を見る。 カット線の上にテープを 貼り付け、引き剥がす。 | カット線以外の錆、膨れ、剥がれなどの塗膜の劣化状態を観察する カット線からの剥離幅を測定する | JIS K 5600-7-1 |
耐 アルカリ性 | 塗装片をアルカリ溶液中に 指定時間浸漬し、 水洗いした後表面状態を 観察する | 塗装の膨れ、割れ、剥がれ、色調、光沢の変化を観察する | JIS K 5600-6-1 |
耐酸性 | 塗装片を酸溶液中に 指定時間浸漬し、 水洗いした後表面状態を 観察する | 塗装の膨れ、割れ、剥がれ、色調、光沢の変化を観察する | JIS K 5600-6-1 |
促進 耐候性 | 塗装片にキセノンランプを 照射し、水噴霧を繰り返して表面状態を観察する | 色調、光沢の変化度合いを評価する | JIS K 5600-7-6 |
耐湿性 | 試験片を槽内で湿潤状態に 保ち、指定時間後に 表面状態を観察する | 錆、膨れの度合いを評価する | JIS K 5600-7-2 |
設置場所から見た塗装性能
キャビネット工業会は「環境から選ぶ盤の塗装性能」を発行しており、
配電盤類の塗装仕様を、
「屋内仕様」「屋外仕様」
「耐塩仕様」「重耐塩仕様」
「耐酸仕様」「耐アルカリ仕様」 と 設定しています。
塗装性能を設置環境別に使い分けましょう。
(以下 キャビネット工業会「環境から選ぶ盤の塗装性能」から抜粋)
塗装性能の規格と実際
キャビネット工業会以外に、JSIA-T1020配電盤類の塗装技術、JIS K 5981合成樹脂粉体塗膜
に塗装性能が記載されています。配電盤類の塗装性能として参考にしてください。
容易に入手できるキャビネットメーカーの例も記載します。
まとめ
配電盤類の塗装性能は、硬度、付着性、塩水噴霧性、耐アルカリ性、耐酸性、耐候性があります。
配電盤類の塗装仕様は、設置環境別に
屋内仕様、屋外仕様、耐塩仕様、重耐塩仕様、耐酸仕様、耐アルカリ仕様があります。
塗装性能・塗装仕様を使い分けましょう。
キャビネットメーカーの塗装仕様が目安になります。
参考文献
JIS K 5981 合成樹脂粉体塗膜 (日本産業標準調査会)
JSIA-T1020 配電盤類の塗装技術 (日本配電制御システム工業会)
JEM-TR251 配電盤・制御盤の塗装(日本電機工業会)
環境から選ぶ盤の塗装性能 (キャビネット工業会)